DTMerのための位相の話

位相-15

位相についてまとめてみました。

位相とは

位相-1
音は周波数で表す事ができて、例えば100Hzの音だと1秒間に100回の振動があり、グラフにすると上の画像のように同じ波形が100回繰り返されるものとなります。上の画像から1回分の波形だけを切り出すと、

位相-2
これが「1周期」と言われるものです。横軸は時間、縦軸は振幅(音の大きさ)です。通常の波形はプラス側にもマイナス側にも振れるようになっていますが「0(中心)」からの距離、これが音の大きさを表します。

位相-3
そして位相とは周期の位置を示すものです。100Hzの波形があって、その波形の位置、赤点の位置なのか、青点の位置、緑点の位置なのかを示すものです。

位相-4
位相は1°から360°までの角度(ラジアン)で表します。180°の位置と言うとちょうど1周期の半分の位置のことです。

位相がずれる状態とは

よく言われる「位相がずれる」という状態はどのような状態を言うのか?

通常のステレオ音源の場合は、LチャンネルとRチャンネルがあり、それぞれで100Hzの音を鳴らした場合、

位相-5
LとR、どちらも同じタイミングで音が鳴っていればこのようになります。波形のスタートタイミングは同じであり「同相」と言われるものです。音(波形)が重なっているので赤線しか見えません。

位相-6
位相がずれると言うのは、例えばRチャンネル(赤線)だけが少し遅れて鳴る場合、同じ時間軸で見ると波形の位置がずれてしまいます。波形の位置がずれている、つまり位相がずれているという状態です。

位相がずれていると音にどう影響してくるのか?

波形の位置がずれることを「位相がずれる」と言います。では、位相がずれると音にどのような影響があるのでしょうか?

音の合成を考えるとしましょう。

位相-7
2つの音が同じタイミングで鳴る同相の場合、青線の音量レベルが「1」、赤線の音量レベルも「1」の音を合成すると音量レベルは倍の「2」、橙の線になります。(青線と赤線は重なっているので赤線しか見えませんが)

位相-8
2つの音のタイミングが異なる場合、青線と赤線の位相が180°異なる場合を考えてみましょう。所謂「逆相」と言うものです。音の波形はプラスにもマイナスにも振れるので、180°位相がずれるとプラスマイナスが全く逆の波形になります。そしてそれらを合成すると、レベルは「0」。橙の線となります。

プラス1とマイナス1を合成するとゼロです。音は鳴らなくなります。

また、逆相までいかなくても位相がずれると音が奥まった感じに聞こえたり、芯のない音、こもった音などになることがあります。

音は強め合い、打ち消し合うもの

上に挙げているグラフは単一の周波数の音なのですが、実際の音というのは倍音が含まれていたり、複数の楽器が同時に鳴っていたりと、もっと複雑なものとなります。

位相-9
異なる周波数があると、音のレベルはどのようになるかと言うと、100Hz(青)と200Hz(赤)と300Hz(橙)が同時鳴ったとして、それらの音の合成をしてみると、緑の線となります。100Hzも200Hzも300Hzの音も全てレベルは「1」です。でも、合成しても「3」にはなりません。最大で2.5程度です。あるところで「1以下」になっています。

複数の周波数を合成すると、音というものは、あるところでは強め合い、あるところでは打ち消し合うものとなります。

音の波形はプラスにもマイナスにも振れるために起こる現象です。

実際にどのような場面で位相ずれが起こるのか?

位相がずれるという意味は上の説明で大まかなイメージは持てたかと思います。では、実際にどのような場面で位相がずれるのか考えてみましょう。

先ずはリスニング環境での位相ずれについて。

左右のスピーカーからでた音は、直接耳に届く直接音と、壁などの反射によって耳に届く反射音があります。

当然、直接音の方が早く聞こえ、反射音が遅れて聞こえてきます。この時間差が位相のずれです。

スピーカーで聞くほとんどの場合は、直接音と反射音で位相のずれが起こっています。

ただし、通常の部屋の場合は、多少の位相ずれがあったとしても違和感を持つ事は少ないかもしれません。日常の生活上では意識することもないほどに。

オーディオルームなどは、吸音材などを使用して響きをコントロールすることでリスニング環境を良くする事もできます。位相による影響が軽減される方向となります。

録音ではマイキングによって位相が変わる

ギターアンプの前にオンマイク、後ろにオフマイクを設置すると、それぞれが正相と逆相になりそのままでは音は打ち消されてしまいます。

スネアも同様に上下にセットすると正相逆相の関係になります。

アコースティッグギターなどでも複数のマイクで録音した場合は、位相の干渉が起こることもあるので、そういうときは片側の音を位相反転したりして音の干渉が少ない方を選ぶ必要があります。

位相を積極的に制御するエフェクターもある

位相-11
コーラスやフランジャー、フェイザーなどのエフェクターもこの位相のずれを使ってうねりや広がりのある音を作っています。

フェイザーと言うのはPHASE SHIFTERと言われ、その名の通りPHASE(位相)をシフトするものです。原音に対して位相をシフトした音を加え処理を行なっています。

モジュレーションエフェクト以外にも空間系エフェクト、例えばステレオイメージャーなどでも位相を制御して広がりをコントロールしたりしています。

楽曲の位相をプラグインでチェックしよう

位相-12
Logicに付属している「Correlation Meter」は位相をチェックするためのプラグインであり、プラス側に振れると位相が合っている状態、マイナス側にふれると位相がずれている状態を示すものです。

位相-14
Wavesの「PAZ Analyzer」でも位相をチェックすることができます。位相がずれている音は、黄色い枠内の「Anti Phase」という領域に表示されます。

ただ、これらのプラグインはあくまでも目安であって、位相がずれているのが必ずしも悪ではありません。モジュレーションや空間系エフェクトを使えば位相ずれは発生します。位相ずれが全くない音源はステレオ感的には面白くないものとなってしまいます。良い悪いの判断はあくまでも耳で行なうべきです。

ディレイによって打ち消される音

「音のタイミング」、ディレイによっても音が打ち消されることがあります。

位相-10
例えば100Hzの音の波形、1秒間に周期が100回繰り返されるものです。1周期は時間で言うと10msです。1周期の半分では5msです。

100Hzの音に5msのショートディレイをかけると逆相のときと同じく、波形のプラスマイナスが逆になってしまいします。この状態だと合成しても音はでません。「音のタイミング」が異なるというのは、言い換えると「位相がずれている」ということです。

位相は定位へ影響を与える

音の定位は何で決まるのか?

LチャンネルとRチャンネルが全く同じ波形なら、音は中央に定位します。

波形の周期は同じでもLチャンネルだけの振幅(音量)を上げれば左側に定位するようになります。これは音のレベルにより定位が決まるものです。

一方、LRともに波形の周期、振幅も同じで、Rチャンネルにだけディレイをかける(発音を遅らせる)と、左側に定位することになります。先に音が聞こえてきた方に音があると認識するためです。

音のうなりに注意しよう

異なる周波数が混在すると音に悪影響を及ぼすことあります。そのひとつが音のうなり。

ギターのチューニングで5フレットと7フレットのハーモニクスで音を鳴らした時に、1Hz音がずれていると「うわ〜ん」といううなりが1秒間に1回発生します。振動数がわずかに異なる周波数によってうなりが生じます。

位相-15
DTMのミックスでも同様で、100Hzと110Hzを合成すると10Hzのうなりが生じます。上の画像でも100Hz(赤線)と110Hz(青線)を合成すると橙線になるのですが、橙線は大きな山(波形のかたまり)が周期的に5つ出来上がります。これが音のうなりとなります。わずかに異なる周波数を合成すると、その差分が低周波となって生じます。

これは倍音にも当てはまる事で、100Hzのキックの音の場合、200Hzや300Hzの倍音がでて、そこにベースの190Hzが加わるとキックの2次倍音との10Hzのうなりが発生します。

特に低域のうなりに関してはマスキングの問題もあり、全体的な音の鳴りに大きく影響する事があります。

まとめ

位相について基本的な事柄をまとめてみました。次はもう少し実践的なことをまとめていこうと思います。

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