ギターダブリングの考え方と設定のコツ

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エレキギターのダブリングTipsですが、他の楽器でも応用可能です。

1. ダブリングがもたらすもの

ダブリングは、迫力や広がり、臨場感など、ギター1本では表現できない音空間を作る事ができます。

同じ音の2本のギターを録音して、片方はL100%、もう片方はR100%でパンニングすることで音圧や迫力、広がりのある音にすることができます。

パンニングは、LR振り切りではなく、L10時、R2時方向など、ライブ感ある空間を演出することもできます。

同じ音、同じフレーズを2回録音したとしても、人の演奏には若干のずれがあり、例えば指板を押す強さのずれ、ピッキングの強さのずれ、発音タイミングのずれなど、これらのずれがグルーヴを生み出し、音の臨場感へとつながります。

2. 位相を反転

同じ音、同じフレーズを2回録音すると、位相の問題によりイメージ通りに音が鳴ってくれない場合があります。2つの音が干渉し、メリハリがなくなったり、奥まって聞こえたりする現象です。

その場合、2つの音のどちらかを逆相にします。逆相にすることで、音の干渉を防ぎクリアに聞かせることができます。位相反転はDAWのプラグインなどで簡単にできます。

位相について、さらに詳しい内容は下記の記事を参照下さい。
DTMerのための位相の話

3. 複数の音で壁

2本のギターだけでも迫力のあるダブリングサウンドを作ることができますが、3本、4本とさらに音を重ねることで音の壁を作ることができます。

上限はありません。好きなだけ音を重ねることができます。

では、実際にどれだけのギターを重ねれば良いのか?に対しては、ダブリングで何を表現したいのか?というところ。

音の臨場感や広がりを求めるなら、2本のダブリングでも十分です。

音の壁や洪水のように押し寄せる音を表現するのなら、2本のみならずもっと多くの音を重ねてもいいかもしれません。

ただし、音が多くなるほどにミックスは難しくなります。次項目では、ダブリング諸問題への解決策を見てみましょう。

4. 思うような音にならないケースへの対応

2本のギターを録音したとして、片方だけを位相反転して音を聞いてみたところ、

「イメージしていた迫力がでていない」or「広がりがなくダンゴ状態」となるケースがあります。

思うような迫力が出なかったり、分離が悪かったり、広がりがでなかったり、ずっと音が奥まった感じになっていたり、

ケースにより現象は様々ですが、単に2本のギターを録音しただけでは思うように音が鳴らないケースがあります。

対応としては、以下の2つの項目。

4-1. 低域の処理

複数の音を重ねると、どうしても低音が膨らんできます。

低域は方向性(定位)を感じにくいことに加え、音を重ねることにより絶対量が増し飽和状態となっていきます。

また、低域は他の帯域のマスキング要因にもなります。低域をカットすることで、音がすっきりし、分離も良くなります。

EQのローカットなどを使い、大胆にイコライジングしても良いかもしれません。

4-2. 干渉を防ぐため左右の設定を変える

Lに配置した音と、Rに配置した音を同じ音で鳴らしている場合、LRは基本的に同じ周波数特性を持ち、同じ倍音成分を含んでいます。

そのため、単体では良い音で鳴ったとしても、複数になると音が干渉し、意図しないダブリングサウンドになることがあります。

位相反転、低域カットでも改善しない場合は、音作りの段階まで戻ってみましょう。基本的な方向性はLとRで音作りを変えること。

例えば、アンプシミュレーターではマイクの種類やマイキングをLRで変えたり、アンプのドライブ量(ゲイン)を変えたり、実機のプリアンプなどではサウンドモードを変えたり、ストンプの種類を変えてみたり、

全体的な音の印象を変えずに、ディティールのみを変える音作り。

もしくは、もう少し大きな音の違いを出すとすると、アンプ種類を変えてみたり、同じ音(同じセッティング)でもギター自体を変えるなど。

ダブリングの基本は同じ音ですが、左右の音に差があるほどに音の干渉を防げることがあります。

5. ショートディレイによるダブリング

演奏を2回録音するのではなく、ディレイエフェクトを使用してもダブリングサウンドを作ることができます。

基本はショートディレイ、1ms〜40ms程度のディレイタイムにして、原音はLに配置、ディレイのWET音はR側に配置してダブリング効果を出すというもの。

ギターの音作りにもよりますが、数ms程度のディレイタイムでは、原音とWET音の差が小さすぎるために一つの音として聞こえます。原音とWET音が分離して聞こえるようにする場合は、ディレイタイムを20ms前後に設定しましょう。

ディレイのフィードバックは最小値(1回の繰り返しで十分)、WET音の位相反転やイコライジング、モジュレーション効果は任意です。

6. ステレオディレイによるダブリング

ディレイを使用したダブリングサウンドをさらに広がりのある音にしたい場合は、ステレオディレイを使います。

ディレイタイムは上と同じ1ms〜40ms程度、広がりを強調したい場合は、LRでこのディレイタイムを異なる数値にします。

L側ディレイは10ms、R側ディレイは40msなど。異なる数値にすることで、空間演出の自由度がぐっと広がります。この場合もWET音の位相反転やイコライジング、モジュレーション効果は任意です。

※ディレイタイムなどの具体的数値はあくまでも目安となります。

7. その他プラグイン

ダブリングに適したプラグイン、例えばWavesの「Doubler」などでも手軽にダブリングサウンドを作る事ができます。

Doublerではプリセットも豊富に用意されており、それらを選ぶだけで広がりのあるダブリングサウンドを得る事ができます。

デモ音源はもちろん、本ミックスでも十分に使えるクオリティになっているため、直感的な音作り、簡潔なプロセスを求める場合はこういったプラグインも十分に使えるものになるかと。

音像イメージを自在に操れるWaves Doublerを試してみた

8. キモはタイトなリズム感

人の演奏を複数回録音するダブリングと、ディレイを使用したダブリング、2つの方法を紹介しましたが、音の臨場感を求めるなら間違いなく前者です。

同じ演奏をしたとしても、人間の演奏なのでバラツキがあります。それがグルーヴとなり、臨場感へとつながります。

しかし、グルーヴでなく、乱れたリズムでのダブリングは格好悪く、聴けたものではありません。例え音作りが最高にかっこ良くても、リズムが乱れていると台無しです。

タイトなリズム感はダブリングにおける最も重要な要素であり、最も難しくもあります。

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